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ボーリングないしはドリリングによる

観測井の設置方法と、地質試料の採取方法

−バングラデシュの場合−


このページの目次

  1. 井戸掘削の方法
  2. 井戸のオーダーの方法
  3. 観測井戸の値段
  4. 調査(地質試料採取)だけの金額
  5. スラッジャーメソッドによる地質試料の採取方法
    1. 掘削の手順
    2. ロッドへのマーキング方法
    3. 試料採取方法
  6. その他

井戸掘削の方法

 バングラデシュで一般的に行われている井戸用のボーリング方法は、現地のワーカーが言う「スラッジャーメソッド(たぶん英語ではSluger Methodと書くのでしょう)」という方法です。
 百聞は一見に如かず、ですので、以下のVideo Fileを見てください。

スラッジャーメソッドによる観測井の掘削状況
Photo[Bangladesh drilling system : Sluger method] Video File ダウンロード:Real player file format(730KB):画像記録は10秒
 ダウンロードしやすくするため、高圧縮しております。このため若干画像が乱れています。ご了承ください。音声は入っていません。
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ご注意
 このビデオファイルの著作権は私、小林にあります。
 内容の改変は、いかなる目的であれ、その一切を禁じます。
 商用目的に使う以外であれば、何にお使いになってもかまいません。ただし、著作権表示は必ず行ってください。

 掘削ロッド(パイプ)の上端に、手で「弁」を作って、ロッドの中を通して、掘削泥水とスラッジ(日本語ではスライム)を上げてくるという、仕組みです。正式には、ハンドドライブリバースサーキュレーションとでも言うのでしょうか。僕が参加していた応用地質研究会では、最初スラッジャーメソッドという現地での呼称を知らなかったので、手の弁の様子から「パコパコ方法」等と呼んでいました。
 この方法により、おおむね深度300feet(1feetは約0.3048mですので約90m)くらいを一日半で、掘って井戸管を挿入してしまうのだそうです。僕自身は、今のところ正確に観測井戸として作ることができたのは、100feetまでですが、現地ではヒ素対策用に、多くのDeep Tube Well(一般的に200feetより深くなるとDeepと呼ばれているようです)が、このスラッジャーメソッドで作られています。
 井戸用ケーシングは、1インチ半が一般的ですが、3インチのケーシングまでこの方法で掘削し、挿入することができます。これは単に太いビット(刃先)に交換するだけで対応可能です。僕自身、観測のために、1インチ半と3インチの井戸を作っています。

 この他には、僕は良く知らないのですが、「ドンキンメソッド」と呼ばれている、非常に大口径(10cmくらいか?)のロッドを、人が回転させながら掘削する方法もあるそうです。一度だけダッカで見たことがありますが、それ以降見かける事がないので、よくわかりません。
 なお人によっては上記のスラッジャーメソッドをドンキンメソッド(ダンキンメソッド)と言う人もいるので、必ず「手で弁にして掘削する方法」とか、写真を見せて確認する必要があります。


井戸のオーダーの方法

 まず井戸屋を探す前に、以下の内容を決めておかなければなりません。

  1. 井戸管(Well Casing)の径
  2. 深さ
  3. スクリーン(日本語ではストレーナー)の深さ
  4. 井戸ケーシングの浅い部分は鉄パイプ(現地ではGIパイプと言う)の長さ
  5. ハンドポンプの種類
  6. ベースメント(井戸の回りの土台、たたき)
  7. グラベルパックの有無
  8. 土の採取方法

 全てインチ、フィート単位です。

 井戸ケーシングの口径は、1インチ半、2インチ、3インチとあり、肉薄の日本で言うVUや、肉厚の日本で言うVPがあります。肉の厚さについては、井戸屋の店頭で実物を見て確認した方が良いでしょう。なおパイプにはあやしい製品があって、「UNISEF PVC PIPE ClassD B/S3505 Not For Sale」という(注:UNICEFではなくUNISEFと書いてある。なんだこりゃ?)というのも出回っています。

いろいろなケーシング
Photo[いろいろなケーシング]
 内側に補強がついているケーシングが、下記で書いている
「UNICEF PVC PIPE ClassC B/S3505 Not For Sale」
という1.5インチの井戸ケーシング。
 テープの目盛りは1インチ。

 井戸ケーシングは一般的にはPVC製で、15feetで一本ができています。
 スクリーンパイプは、いろいろあって、6feet、10フィート、15フィートと、僕の経験では3種類の物があります。いずれも0.1ないし0.2mmの横スロットです。開口率はよくわかりません。1インチ半のスクリーンには2つの種類があって、一つは「UNICEF PVC PIPE ClassC B/S3505 Not For Sale」という既製品のものと、普通のPVCパイプを人がスロットを切っている物とがあります。このUNICEFの既製品は、見かけ上非常に良くできていて、日本で使いたいぐらいに見えます。僕の勤めている会社の関連会社に調べさせたいぐらいです。単価は、UNICEFスクリーンが85tk/6feet、通常の物が57tk/6feetって言っていました。この価格は信じられませんが、要は1.5倍くらいの差があると思って間違いないでしょう。

UNICEF PVC Screenと、普通のPVC Screen
Photo[unicefと通常タイプの井戸ケーシングの比較-01] Photo[unicefと通常タイプの井戸ケーシングの比較-02]
 上の灰色のケーシングがUNICEFと書いてあるもの。
 コンベックスの目盛りは1センチ。

 井戸ケーシング(PVC)だけでは地上部のハンドポンプに接続できませんし、地上部がPVCでは割れたりして不安です。このため現地では、地表面に近い約2mの部分をGIパイプと呼ばれる鉄製のパイプを用います。このGIパイプは、1インチ半の直径の物については、店頭にねじ切りをしてある物(ハンドポンプをそのままつけることができる)が、あらかえじめ5feet程度の長さに切って用意してあります。しかしこれ以外の口径や長さとなると、特注扱いとなります。この場合、下手をするとダッカから取り寄せて、さらに加工まで要するため、一週間程度必要となる可能性があります。もちろん費用も別にかかります。

 ハンドポンプはいろんな種類がありますが、どれもそれほど性能に差はないので、お好みで決めればよいでしょう。なお深いからといって、高い物を買う必要はありません。

 ベースは、井戸屋が作る場合と、作らない場合とがあります。バングラデシュでは井戸掘削後、一週間程度してから左官屋に頼んで、自分で材料を買ってきて、その材料を元に作らせているようです。調査などで、短期間しか滞在できない場合は、井戸屋に頼むしかないでしょう。

 井戸ケーシングの回りにグラベルを充填する場合、これはバングラデシュでは一般的ではないので、その材料は自分で用意しなければなりません。井戸屋に聞くとどこで買えばいいか教えてくれます。
 調査用の土の採取については、後述します。

 井戸屋は、掘削したい場所の近くのバザールに行けば必ずあります。パイプとハンドポンプが並んでいるので、すぐに見つけることができます。

 井戸屋に上記の内容を説明すれば、概略の値段は決まります。
 私が頼んでいる井戸屋の場合、井戸屋に掘削の注文を出すと、井戸屋が実際に掘削するオペレータにオーダーを発注して、日時が決定したら、井戸屋がそのときに材料を運んできて、オペレーターが掘削、井戸管挿入を行って、その日にオペレーターに直接掘削費を支払って、最後の日に井戸屋に材料費を支払うという仕組みです。この仕組みは、井戸屋によって異なります。オペレータの費用も一緒の所もあれば、僕が使っているところのように、別に支払うところもあります。

 なお調査ボーリング(土の採取)を行う場合、必ず井戸屋に調査ボーリングである旨を説明し、オペレーターの親方と会っておくことを強くお薦めします。私は約10年ほど日本でこの種の事をやってきたので、彼らが心配しそうなポイントを説明できるのですが、そうでない場合、親方に会って、彼らの心配点について十分な配慮をしてあげる必要があるからです。


観測井戸の値段

 3インチの井戸は上記に書いたように一般的ではありません。高額であるということをご承知おきください。
 また使用される資材は、生産または輸入される地域から、調査を行う地域まで運搬されてきます。このため、地域的に、値段は異なることが予想されます。この点についても、ご承知おきください。

品物 数量 単位 単価(tk) 小計(tk) 備考
井戸屋が用意(現場まで運んでくれる。通常、この運賃は無料。) 3インチのPVCパイプとスクリーン 96 feet 17 1,632  普通のパイプとスクリーンは同じ値段にしてもらっている。僕の場合、地層によりスクリーンの深度を決定しているので、現場には多めのパイプを持ってきてもらい、あとで精算することにしている。このため値段が違うと精算が面倒なので、同じ値段してもらっている。結果的には高くついているのだと思うが、仕方がない。
3インチのGIパイプ 6,1/2 feet 120 780  井戸の口元(井戸ケーシングの地上にでる部分)用。鉄パイプのこと。3インチと太いので、ダッカから取り寄せ。一日かかる。
GIパイプとハンドポンプ間のフランジ作成(特注、溶接やナット類など全部込み) 1 540  内訳:フランジ用の鉄板2枚(180)、間に挟むラバー板1枚(20)、ボルトとナット4式(20)、1,1/2インチのGIパイプ(ハンドポンプ接合部)1feet(50)、3インチGIパイプへの鉄板溶接(フランジ作成)(100)、1,1/2GIパイプへの鉄板溶接(フランジ作成)(100)、溶接のやり直しとヤスリ削りによる角落とし(70)。
 ハンドポンプは1,1/2インチのGIパイプ(日本の通称:鉄パイプ、または足場パイプ)でなければつながらない。井戸ケーシング管は3インチなので、これらの管同士をつなぐフランジを作らなければならない。もちろん普通の井戸(1,1/2インチ)であれば、このフランジは必要ない。
 一度作らせて、仕上がりをチェックして再度加工し直して、現場で使って、使いにくいので直させて、たいがい計一日半は要する。
PVCパイプの接着剤 1 100 100  バングラでの井戸ケーシング管の接合方法は一般的に、太い方(メス側)を火であぶって柔らかくして、上からオス側(下)に挿入する。僕はこれだけだと水圧による地下水の井戸管への浸水が心配なので、接着剤もつけさせている。なお接着のための火を起こすオイル代として1リットル30tkを現金で井戸職人に渡す必要あり。(おつりが返ってくることはない)
PVCパイプ接合時に巻くビニールテープ 2 15 30  井戸管を挿入するときに、井戸管を接合した後、接合部にビニールテープを巻いて仕上げている。必要ないと思うが、僕の頼んでいる職人がいつもやっているので、値段も安いのでやらせている。こういうところは職人に任せて置いた方がよい。
ハンドポンプの設置時に、井戸管に巻くテフロン製シールテープ 2 10 20  中国製のテフロンシールテープ。日本の水道屋がよく言う通称「白テープ」。結構まともな製品に見える。買っても職人が使うことを忘れることがあるので、注意してあげよう。これを巻くのと巻かないのとじゃ、結構違う(と僕は思っている)。
ハンドポンプ 1 800 800  ハンドポンプは500〜1,000tkまでいろいろ種類がある。特に性能に差はないようだ。つい真ん中の値段の物を買ってしまうのは、なぜだろう。
自分で用意。(自分で現場まで運ぶ必要がある。) グラベルパッキング用グラベル 10 feet3 18 180  バングラでは一般的にチャート(岩石名)を砕いた物をグラベルと言う。非常にとがっている。どこで買っても砂や粘土分が混入しているので、気になる場合は、洗浄が必要。日本の「珪砂(丸いやつ)」はまず手に入らない。
 ブリッジングを起こすことは確実だが、入手できないのに加え、ハンドポンプだから、まあいいか、と思って使っている。
グラベルパッキング用極微細砂 10 feet3 10 100  砂は微細砂と称しても中粒砂が多く出回っており、実際に物を見て確認する必要がある。品質が気に入らないときは、はっきりNOと言おう。砂はいろんな所で、結構売っている。
グラベルと微細砂の容器代と運賃 1 250 250  こちらの職人は一斗缶を一杯で1feet3として換算している。もしくは、土嚢袋(化学肥料やセメントを入れている袋、こちらではサックと呼ばれている)を一杯で2feet3として換算している。この袋も自分でバザールに行って探さないといけない。もちろん運ぶ車も。僕はベビータクシー(オートリキシャ)に10feet3(土嚢袋5袋)積んで、さらに2人乗せて運ばせている。
直接職人に支払う。(職人に支払わず、井戸屋に支払う場合もある。) 井戸掘削職人への労務代
(井戸洗浄用電動ポンプの借り代込み)
3 1,150 1,150  のべ5〜7人日程度。だいたい1〜2日で終わる。通常は掘削から1.5インチ井戸ケーシングのたて込み、ハンドポンプの設置までの費用で、1feet/10tkが普通。この費用は、毎日払うか、最後の日にまとめて払うかは、職人によって異なる。なお井戸周りのコンクリートの「たたき(僕はBaseと呼んでいるが、正式名称ではない)」は、井戸屋の仕事ではありません。
 この他に職人の食費や、火付け用のガソリン代を負担する場合もある。
 職人からは領収書はでないので、最後の日に、職人に支払った合計を井戸屋に伝えて、井戸屋から領収書をもらう。注文前にどこから領収書がもらえるか確認しておく事。
井戸周辺のたたき作り 1 1,000 1,000  僕はいつも短期間しか滞在できないので、この費用は概算。いつもこの値段よりもおおめに現地の協力者に渡して、作ってもらっている。彼らは左官職人に頼んでいるらしい。
合計(深度100feet、3インチ観測井) 1本 6,582 日本円に換算すると\14,480.-(1tk=2.2円)

 270feet(約100m)で井戸ケーシング3inの場合、概算で次のように言われたことがあります。

  1. 職人の費用:40tk/feet 計約10,800tk
     これは3回から4回に分けて、堀り直しながら、孔径を広げていくためこの費用になるようです。
     また泥水調製がきちんとできないため、井戸が崩壊することを恐れて、昼夜掘り続けます。このため照明設備などについて、あらかじめ打ち合わせをしなければなりません。さらに日本人が立ち会う場合、夜間のセキュリティについても、十分に確認しておかなければなりません。バングラデシュは、外国人にとって危険な地域です。
  2. 井戸の諸費用:計9,500tk

調査(地質試料採取)だけの金額

 観測井戸を設置せずに、地質試料だけを採取するということをやってみました。

 これは何度か観測井戸の設置を依頼した経験から、試料採取だけのボーリングを行えそうだと判断したためです。

 試料採取を目的とする場合、すこし掘削の手順が異なります。この手順は、井戸掘削目的の場合と異なり、いつも彼らが行っている方法ではなため、この手順を踏んでくれるかどうかが決め手になります。
 打ち合わせの時には「やるよ、やるよ、問題ない」と言っていても、最初の数回分は行うが、それ以降は行わなくなるとか、日本人が見ていないと行わないとか、ともかくすぐにサボります。サボるか、サボらないかが、試料採取だけのボーリングを行えるかどうかの決め手になります。

 実際の手順は簡単です。
 掘削しているロッドの先端の歯(ビットという)と、スラッジが上がってくるまでには距離があるため、時間差が発生します。この時間差は、見ているこちらには正確にわかりません。
 そこで、所定の深度が来たら、そこで掘削を停止し、ロッドを多少あげて、そこでロッドを上下させて、試料が上がってくるまでの間、掘削をさせないのです。
 これでほぼ所定の深度の試料採取が可能になります。

 ではこの場合の費用はいくらになるでしょうか。

 僕の場合、10Tk/1feet+食費だけでした。


スラッジャーメソッドによる地質試料の採取方法

 これも百聞は一見に如かずですので、下のVideo Fileを見てください。

スラッジャーメソッドによる地質試料採取状況
Photo[Soil sampling : Sluger drilling method] Video File ダウンロード:Real player file format(730KB):記録されている画像は10秒
  ダウンロードしやすくするため、高圧縮しております。このため若干画像が乱れています。ご了承ください。音声は入っていません。
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ご注意
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 ただし、著作権表示は必ず行ってください。

 ロッドを伝わって上がってくるスラッジ(日本語ではスライム)を、バケツでキャッチするだけです。
 ただし、ただ単にキャッチするだけではなく、いくつかの注意事項があります。

  1. あらかじめ試料採取(キャッチ)する深度をロッドにテープでマーキングしておく(1mごとがわかりやすい)
  2. オペレーターに、地質が変わったら教えてもらうように、伝えておく
  3. 地質が変わったところで、試料を採取したい旨、オペレーターに伝えておく
  4. 特に塊状でスラッジが上がってきた場合、できるだけその試料を採取したい旨、オペレーターに伝えておく
  5. 実際に土が地上に上がってくるまでに時間がかかり(刃先から地上までの流体によるスラッジ運搬のため)ます。そのことも考えておく。

 試料を採取するためには、掘削の手順、ロッドへのマーキング方法を正しく理解しておくことが必要です。

1.掘削の手順

 掘削は、3種類のロッドで行われることが一般的です。

 手順1)まず掘り始めには、掘削ビットのついた鉄製のロッド(a)で掘り始めます。
 手順2)次に短いロッド(c)をこれに継ぎ足して、掘ります。頭部が地面に近くなりこれ以上掘れなくなったときに、ロッドを上げて、短いロッド(c)を取り外し、16feetのロッド(b)と交換します。そして降下させると、短いロッド分の長さは掘れていますので、長いロッド(b)の残りの長さをそのまま継続して掘り進めます。
 手順3)そしてこの16feetのロッド(b)の頭部が地面に近くなりこれ以上掘れなくなったときに、短いロッド(c)をつなぎます。このまま、短いロッド分を掘り進めます。
 手順4)短いロッド(c)の頭部が地面近くになってこれ以上掘り進めなくなると、短いロッド(c)と16feetのロッド(b)とを交換するため、短いロッド(c)を地上に上げます。そして16feetのロッド(b)と交換して、短いロッド(c)で掘削した分をおろして、掘り進めます。(すまわち手順2と同じ事です。)
 手順5)手順2と3の繰り返しです。

 なぜこのように短いロッド(c)を使うのでしょうか。それは、もし短いロッド(c)がなければ、掘削してロッドの頭部が地上近くになった後、次に16feetのロッド(b)をつなぐ必要があるのです。

  1. 16feetの高さの足場を組むことが非効率である
  2. 16feetの長さで、安定した手の弁による排水・排土ができない

2.ロッドへのマーキング方法

 先端のビットからの深さを、マーキングしていくことが原則です。先の試料採取のビデオファイルで、ロッドに黄色いテープが巻いてあると思います。これがそのマークです。
 最初の鉄製のロッド(a)は先端から長さを測って、テープなどを巻いていきます。僕はマークには、ビニールテープを使っています。
 二本目は、鉄製のロッド(a)の残りの長さ(日本のボーリング業界ではこれを残尺と言います)をはかっておき、次の短いロッド(c)では、その残尺分を1mから引いた深度にテープを巻きます。その巻いたところから、1mずつテープを巻いていきます。
 次は注意が必要です。短いロッド(c)は16feetのロッド(b)に交換しますので、次のマークは16feetのロッド(b)につけます。このときのマークの位置は、短いロッド(c)と同じ位置、すなわち鉄製のロッド(a)の残尺分を1mから引いた深度にテープを巻きます。その巻いたところから、1mずつテープを巻いていきます。
 その次は短いロッド(c)をつなぎますので、16feetのロッド(b)の残尺分を1mから引いた深度を、短いロッド(c)にテープを巻きます。
 そしてこの繰り返しです。

  1. 常に残尺を忘れないこと。
  2. 接続部分の長さも考慮しておくこと。
  3. 巻いたテープに、オペレーター(掘削の職人)にも見えるように、大きく数字を書いておくと良い。つい深さを忘れてしまうことがあるが、印に書いておくと、誰でもわかる。
  4. テープを巻く作業や、深度をテープに書き込む作業は、オペレーターが見えるところでやる方がよい。彼らの道具に印を付けるのだし、またこちらが間違えている事を気が付くと、教えてくれる。
  5. 1cmや2cmにこだわらないこと。マークが多少ずれてしまうのは、仕方がない。
  6. 掘削終了の最終的な深さは、職人に従うこと。厳密にマークしてその数字を元に、掘削数量が違う、なんて絶対に言わないこと。もしもっと掘りたければ、職人の数字の元に、掘り進めること。
  7. ロッドは濡れているのでテープが巻き付かないこともあるので、ウエス(ボロぞうきん)の様な物を用意しておくと良い。
  8. ビニールテープを持ってこなかったときは、井戸屋に言ってみると、結構持っていることがある。

3.試料採取方法

 試料採取の注意点は先に書いたので、そちらを読んでください。

  1. バケツをあらかじめバザールで買っておく。(当たり前ですが)
    おおむね100〜300taka程度。
  2. マークの深度まで掘削したら、バケツを渡して、ある程度採取できたら、こちらに渡してもらう。
  3. 試料を脱酸素させて保存する場合の小道具関係は以下の通り。
  4. バケツを渡してもらったら、ユニパックを裏表逆にして、手袋状にしながら、手でサンプルを採取。
    これは、各種サンプリング工具によるコンタミを防ぐため、工具を使いたくないことによる。
     なお試料を脱酸素して保存する場合、試料として不要な部分は、このときに捨ててしまう。本当に必要なもの(部分)のみを採取する。脱酸素させる場合、後で整形する作業(必要な部分のみはかりとる)を、無酸素下でやらないとならず、実際にはかなり難しいためです。(注1)
     以下5〜8は脱酸素させる場合の作業留意点。
  5. ユニパックの中の試料を、直径4cm程度の円柱状にととのえる。
  6. キムタオル(商品名)を使って、ユニパックの外側の水分を拭き取りながら、空気を抜き、チャックを閉じる。
  7. 脱酸素剤を、この円柱試料に対して360度(全周囲)巻くように包み込む。(脱酸素剤で包む)
    無酸素状態になるまで時間がかかり、この間、ユニパックを通して試料が酸化されてしまう。脱酸素剤で包み込むと、このような酸化現象を防ぐことができる。
  8. 酸素遮断袋に入れ空気をできるだけ抜き、ガムテープで空気が入らないように、口元をしっかり止める。
  9. サンプル番号を書き留めて、保存。
  10. バケツを洗う。
注1)無酸素のみを目的とするのであれば、やって、やれないことはない。大きなビニール製のゴミ袋を用意して、この中に試料を入れ、N2などでパージ、充填。その後、試料の必要部位を採取または整形。最近はこのような用途を目的とした簡易な使い捨て袋も売られている。商品名は、簡易グローブボックスまたはグローブバッグ。アズワンなどで扱っている。
スラッジャーメソッドで採取されたシルトのコア試料
スラッジャーメソッドで採取されたシルトのコア試料。
シルトであれば、これくらいの長さで採取できる。
(メジャーの単位はセンチメートル)

その他

 僕が出会った来たバングラデシュの井戸掘り職人は、皆まじめで、非常に好感の持てる人達ばかりである。親方の中には嫌な奴もいたりするが、実際に掘っている人達は、なぜか無口でまじめなひとばかりである。
 バングラデシュの井戸屋の顔つきって、なぜか日本のボーリング屋の顔つきと似ている気がする。

 長い現場の時は、日本から作業着を買っていって、職人にあげてみんなに着させたこともあった。喜んで着てくれるので、結構こちらとしてもうれしい。(以前、東京の新宿に住んでいたときに、新宿の「十二社(じゅうにそう)」というところにある「万年屋」という店で、作業着の半端物を百円単位で売っていた。これを買って行った。)

 田舎で井戸を掘っていると、子供達が大量に押し掛けてくる。どうしても作業の邪魔になる(あぶない)ので、柵のような物を用意しておくと良い。それでも中に入ってくるが、柵があるのとないのとじゃ、大違い。回りの大人達も、外人がどうやって子供達を制御するか、けっこうおもしろがってみている(僕たちは、見られている)。
 柵があっても、アヒルとかヤギとかは平気で入ってくるので、こいつらについては、お尻でも叩いて出すしかない。

 掘り上がって井戸洗浄をしていると、ポンプアップした水に気泡が混じってくることがある。職人達はライターで火をつけて、天然ガスだと言う。確かに火がついて、燃えている。彼らは困ったことだと言う。ガスがでてくると、水に砂が混じるのだという。ガスは一時的な状態で、しばらくするとなくなるのだそうだ。
 職人達は、どこの地域ではガスがでると言うことを良く知っている。
 メタンガス噴出に遭遇したので、その時の動画を載せます。

スラッジャーメソッドによるボーリング現場で遭遇したメタンガス噴出
バングラデシュにおけるメタンガス噴出現場の動画 Video File ダウンロード:Real player file format(740KB):記録されている画像は10秒
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 ただし、著作権表示は必ず行ってください。

このページについて

その1)ページ内の写真について
 写真をたくさん撮ってきたのですが、デジカメのデータがとんでしまい、データ修復できたもののみをここに載せています。
 言葉だけで理解できるような(ダーウィンの「種の起源」の原著も挿入絵がない)文章力があれば良いのですけれど。
 わかりにくいと感じられましたら、ご連絡ください。できるだけ書き直すようにします。
その2)ページ内の動画について
 僕のカメラの動画データが一つのファイル(10秒)の生の撮影状態で約5MBもあります。みなさんに使ってもらいたかった(例えばMS Power Point での動画を使ったプレゼンなど)ので、使いやすいファイル形式での圧縮を試み、2つのエンコーダーソフト(Windows Media Encorder 7.1とフリーのTMPGenc)にてトライしてみました。しかし、残念ながら両者ともにエンコードできませんでした。原因は私の持っているデジカメがMotion JPEG形式のaviファイルでの記録だったのです。
 そこでQuickTime Player Pro(Motion JPEGをいくつかのファイル形式に変換できる)を持っていたので、これを使ってaviファイルにしましたが、これでも同じ品質では約2.7MBにもなってしまいました。これではインターネットでの配布には適しません。ましてやレンタルのサイトですから。
 そこで大変申し訳ないのですが、インターネットでご覧になっていただくだけということで、同程度の画質を前提として、さらに圧縮することにして、Quicktimeの半分になるRealplayer形式にしました。拡張子はrmで、ストリーミング用になってしまいましたが、ダウンロードしてローカルディスクに保存可能です。

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