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地下水試料を日本へ持ち帰るまでの保存について
試料の保存によって、変質や試料容器への付着が発生するため、水質試験は、試料採取後直ちに分析を開始するのが最も良い。しかし、現場で分析できないこともあることから、試験室までの運搬時にできるだけ変質しないように試料の保存処理(成分固定・変質防止)を行う。
実際に発展途上国では、温度を低下させて保存することや、その状態で持ち帰ることが困難な場合も多い。そのような場合、分析値の利用や分析方法をよく考え、保存方法をあらかじめ決めておかなければならない。
なお水試料を送付する場合の試料瓶の考え方については、地下水用試料ビンについてのページをご覧ください。特に航空便の場合の貨物室の気温・気圧等には要注意です。
また具体的な海外から日本への発送方法については、海外から日本への荷物の発送についてのページをご覧下さい。
保存についての考え方
保存中の変質、損失、汚染は一般的に再現性が悪く、完全な補正が不可能である。
従って、十分に特性を調べた上で、最もこれらの影響が少ない方法を選択しなければならない。
- 酸素・微生物に対する安定性
- 蒸発(揮散)
- 雰囲気からの汚染
- 化学的安定性
- (保存容器の影響:保存容器からの附着物の溶出や、容器そのものの溶出、容器への付着など)
化学的安定性と保存容器の影響について
多くの金属類について言えば、通常pHを1より酸性にすることで、サンプルビン内でイオンとして存在することになり、沈殿や器壁への吸着が行われにくい。
例えばFeで考えてみる
- 下図のpe-pH(Fe)ダイアグラムをみると、peやFeの濃度にもよって異なるが、おおむねpHが4より下(酸性側)であれば、通常であればFeは二価のイオンとして存在することになる。
- なお注意点としては、この図からも読みとれるように、採水時に空気が入ったり、長時間空気に接していると、二価の鉄は酸化され三価の鉄になり、さらにpeも大きくなることから、Fe(OH)3として沈殿してしまうことがあげられる。
JIS K 0094 の場合
- JIS K 0094に示されている0〜5度の温度による保存とは、氷詰めの保存である(氷結ではない)
- 同0〜10度とは、氷詰めまたは冷蔵庫による保存である(氷結ではない)
- BOD,COD,懸濁物は、試薬の添加は行わず、低温で保存する
- シアン化合物、硫化物イオン、アンモニウムイオンなどの窒素化合物、リン酸イオンなどのリン化合物は変質しやすいことから、試薬添加後も低温保存が望ましい
- 金属類の試料は、容器への付着を防ぐために必ず酸性とする
(試料中に懸濁物があると、無機物・有機物いずれの場合もそれが試料容器内壁に付着し、さらに様々の成分を吸着しやすくなるので特に酸の添加は大切)
- ヒ素については、特に酸の添加について特別な配慮が必要
- JIS法によるヒ素の定量を行う場合、硝酸イオンや亜硝酸イオンが存在すると、水素化砒素への還元の妨害となることから、硝酸ではなくヒ素分析用塩酸を添加する
- 塩酸を添加すると不都合な分析を実施する場合には、硝酸を添加する
- アンモニウムイオンなどや窒素化合物、フェノール類についても酸を添加する
- 亜硝酸イオンやリン化合物の試験については細菌の活動を抑制するため、クロロホルムを添加する
- シアン化合物、硫化物イオンは酸性や中性では揮散することから、アルカリ性として保存する
またシアン化合物は酸性の物質によって分解されるので、L-アスコルビン酸の添加を行う
硫化物イオンは溶存酸素により酸化されるため、さらに塩基性炭酸亜鉛を添加し、硫化亜鉛として保存する
- アンモニアをイオンクロで定量する場合、酸を添加して保存する場合は、pH2〜3とする
なおこれらの保存処理はあくまでも変質を避けるための処理であって、容器への付着を避けるための処理ではない。容器は対象物質ごとに選択する必要がある。
以下の表に、分析対象項目ごとに、以上の保存処理を行った場合の留意点を示す。
比較的長期間保存できる試験項目、保存できにくい試験項目(出典:JIS K 0094)
比較的安定な項目 |
- フッ素化合物
- 塩化物イオン
- ヨウ化物イオン
- 臭化物イオン
- 硫酸イオン
- ホウ素
- JIS K 0102の48のナトリウムから、70バナジウムまでの金属。ただしクロム(VI)の試料は保存できない。
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やや安定な項目 |
- ポリ塩素化ビフェニール
- ヘキサン抽出物質
- 四塩化炭素抽出物質
- 不揮発性炭化水素
- シリカ
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安定でなく特に早く試験する項目 |
- BOD
- CODMN
- CODOH
- CODCr
- TOC
- TOD
- フェノール類
- 界面活性剤
- ホルムアルデヒド
- 農薬
- 溶存酸素(塩基性炭酸亜鉛で固定した場合も含む)
- 亜硫酸イオン
- アンモニウムイオン
- 硝酸イオン
- 有機体窒素
- リン酸イオン
- リン化合物
- 細菌
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特に不安定で保存を避けたい項目 |
- 臭気および臭気強度
- 色
- 電気伝導率
- 濁度
- 懸濁物質
- 酸消費量
- アルカリ消費量
- ヒドラジニウムイオン
- 亜硝酸イオン
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試料採取現場で試験しなければならない項目 |
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(以上の出典はJIS K 0094です。)
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