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一般環境中の土壌や岩石中に、どれくらいの重金属等が含まれているかを把握するために行われている全含有量分析は、現在の国内の法令等に規定はないものの、下記に一覧する分析方法にて行われている。
ここで注意が必要な点は、一言で含有量と言っても、抽出させる方法により「濃度」が異なることはもちろん、その「形態」も異なることである。従って、目的とする用途により、分析法を明確化しなければならない。
2005年頃より、重金属の含有形態別の分析法として「逐次抽出」または「段階抽出」と呼ばれる分析方法が試みられるようになり、2009年にはEUにて分析法が規定された。なおあたりまえであるが重金属等の形態別分析を実施する場合、原位置とは異なる状態(酸化・還元状態の変化)で試料採取・機器分析(定量)を行うと、何を分析しているのかわからなくなる。試料採取から分析まで綿密に計画(※1)をしておく必要がある。
※1)蛇足であるが、全岩以外の分析(下記に示す127号底質調査法や土対法の含有量分析)も、段階抽出の1つの段階と考えられることから、本質的には同様に取り扱わねばならない。すなわち試料採取する土の酸化還元状態を把握し、酸素の存在しない還元的雰囲気にあるようであれば、試料を酸化させずに分析をしなければならない。このことを知らない地質屋さんがかなりいるので、注意を喚起したい。
私が実験した良い例を紹介しておく。還元的雰囲気の地下水で飽和された帯水層の細砂(現地でORPメーターで確認)を、特に何の固定もせずに持ち帰り、普通の室内で自然乾燥させ、2mmの篩にかけた。その結果、大きさとして2mmを越える多数の鉄の酸化物(ノジュールまたはコンクリーション)が、ふるいの上に残った。このノジュールは、現地の細砂には含まれておらず、酸素に触れることで酸化物として形成されたものである。酸化鉄(またはFe(OH)3)にはヒ素が吸着しやすいことはご存じだと思う。サンプリング時の不適切な取り扱いは、適切な濃度把握ができないことを示している他、地層中の形態も誤って把握してしまうことになる。
このような現象があるにも関わらず、下記いずれの分析法にも、また土壌汚染対策法にも、この酸化還元土壌の取り扱い、特に還元環境下での土壌の採取方法は書いていない。これらは分析法のみを規定しているのみで、試料の採取の責任は採取者にあることを示している。このような酸化還元に伴って発生する現象は、重金属類の濃度把握(汚染問題も含む)を行う際には疑問を挟む余地のない科学的な事実であるため、特に、1)重金属類による一般環境中の濃度(汚染)評価、2)土地の価格に結びつく評価、などを業務とする分析屋さんや調査屋さんは、十分に留意をしていただければと思う。科学的に明らかであるにもかかわらず、不適切な採取・分析による不適切な評価を行えば、専門家としてその責任を免れることは困難だろう。
さらに言及しておけば、この留意は帯水層を構成している地層(土壌)だけではなく、地下水の酸化還元についても同様のことであることは簡単にご理解いただけるだろう。地下水採取後、容器の内部が茶色くなっていることは良く目にするだろう。これは鉄の酸化物が容器の内部に沈殿している現象である。またまた加えさせていただくと、水中の酸化還元状態を把握するのは、DO(溶存酸素)ではない。なぜか環境分析屋さんに、はじめからDOで評価するべきだと真剣に言う方が多いが、これは明らかに間違いである。この評価は、酸化還元電位で行うものである。どこかの底質調査マニュアルにDOで評価すると記述されているらしいが、それがたとえダム湖の中であったとしても、科学的に誤っているので、それをを参照すべきではない。上記に書いたように、その責は、調査実施者にある。
日本国内の土壌汚染にかかる調査・対策における全含有量の分析については、以前(※2)は全含有量分析が規定されていた。しかし、現在の土壌汚染対策法では、全含有量試験の取り扱いはない。
※2)全含有量を規定していた土壌・地下水汚染調査に係る基準は、「重金属等に係る土壌汚染調査・対策指針及び有機塩素系化合物等に係る土壌・地下水汚染調査・対策暫定指針」(平成6年指針)。その際の分析法は、下記に示す「水銀等汚染対策環境調査〜」である。
順不同
「建設工事における自然由来重金属等含有 岩石・土壌への対応マニュアル (暫定版)」について
「暫定版(案)2010年1月土木研究所資料第4156号」は、土木研究所のサイトでは2010年2月までPDFがダウンロードできましたが、「案」ではなくなったものが、2010年3月に下記サイトで公開されたことから、現在ではダウンロードできなくなっています。
現在、「案」ではなくなった同年3月版のものが、国土交通省総合政策局のリサイクルホームページの通達・基準・マニュアル類にて公開されています。
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