僕にはかかりつけの医者はない。しかし皮膚科だけは、いつも行く医者が決まっている。
僕は高校生の頃、何度も水虫とインキンに悩まされた。と言っても、この病気が出るとすぐに医者に行っていたから、本当に悩んだことは一回もない。このため、皮膚科には何軒も通った。(注1)
そのおかげで、良い皮膚科医師と悪い医師の区別が付くようになり、今は良い医者にしか通っていない。
注1)何度もいろんな医者に行ったということは、根本的に治療できていなかったのか、それとも新しい菌に何度も冒されたのか。
水虫やインキンは、白癬菌が起こすことは誰でも知っているだろう。でも白癬菌が起こす症状は、実は、医者が診ただけでは、正確には「見た」だけでは、それが白癬菌による症状なのかは、わからないのだ。皮膚病による似たような(白癬菌による症状ではない)症状は、実はたくさんあるのだ。
ではどうやって、それが白癬菌によるものか、そうでないかを区別するのか。
実は簡単なことで、皮膚を取って、普通の光学顕微鏡で、白癬菌がいるか、または特有の症状が出ているかを、探すだけだ。
そして白癬菌ならば、それ用の薬で、そうでない場合は、それ専用の薬で治さなければならないと言う。全く逆効果を示す場合もあり、市販薬品で直らないのは、それが原因であることが大半なのだという。
この簡単な診療(ものの数分もかからない)をやっている医者は、僕が多数の皮膚科へ通った限りでは、新宿にある一件しかない。
会社に入ってからも一度だけ水虫と思われる症状が出たことがある。現場作業と、毎日の午前帰宅で、どうしても新宿の皮膚科に行くことができずに、仕方なく会社のすぐそば(地下鉄都営新宿線の森下駅構内に看板が出ていた)の皮膚科に行ってみた。
ちょっと小太りのややお年を召された先生が出てきて、一別しただけ(足にもふれず、いすに座ったその直後)で薬を看護婦に告げた。僕は驚いて、「これは水虫ですか?」と聞くと、「何とも言えんな」と言う。「水虫だったら、きちんと白癬菌を殺したいんですが」と言うと、「痒みさえ収まればそれで良いだろう。素人がわかった風な口をきくな。」「はぁっ?」僕は開いた口がふさがらなかった。
この森下の医者が最も最低であった。
きちんと顕微鏡で白癬菌を見せてもらうと、「こいつと戦ってやる」という気になる。
顕微鏡下で観察するのは、なにも白癬菌だけではなかった。
ある出張先の夏の日、畳の上で寝ていたところ、脇腹に数カ所虫さされにあった(正確には虫さされだと思った)。数日たっても直らないので、総合病院に出かけた。回されたのは内科で、診断結果は虫さされ。医者は、患部にも触れずに、目視だけで塗り薬をくれた。しかしこれを塗っても痛いだけで、ちっとも直らない。
急遽東京に帰り、いつもの皮膚科に出かけた。先生は「虫さされじゃないように見えるけれど」と言いながら、患部から皮膚を取って、いつものように顕微鏡観察。「これはヘルペスだよ」と顕微鏡に映る中身を説明してくれた。
僕が予防接種を受けている伝染病専門科の先生曰く、「皮膚科の先生にヘルペスと断定してもらったのは、正解だよ。」
発展途上国に行くことが多いのであれば、このような皮膚科の信頼できる先生を捜しておこう。
虫さされの専門も、皮膚科だ。
場所:新宿の水道道路沿い。セブンシティーの隣。
実際に僕が見て知っている限り数十年前(少なくとも30年前)から毎朝長蛇の列ができていたので、近所なら誰でも知っている。